子育てと離婚

夫婦間に子が誕生しますと、従来の「夫婦」から、あらたに「夫婦+子」となり、家庭内の夫婦関係も、だいぶ変化していくことになります。

婚姻している男女は、夫婦の関係であるとともに、同時に父母の関係ともなるのです。

一般に、子の誕生は夫婦にとって喜びであり、そして子は可愛いものです。しかし、子の誕生と同時に、子が独り立ちするまでの長い期間、夫婦には子を育てていく義務が生じることになります。

法律上においても、未成熟子といって、経済的に自立できない子どもは、その父母が養育する義務が定められています。

小さな子を育てていくのには、多くの労力、エネルギーが必要になります。子育ての過程では、父母にストレスが生じることもあります。

現代における都市部での核家族化が進んだ社会では、夫婦が協力して子育てすることが求められます。地域社会が子育てに関わる環境が失われた現代において、母親だけに子育てを任せておけばよいという夫婦関係では上手くいきません。

父親も子育てに協力していかなければ、時として、母子が社会から孤立してしまうことにもなりかねません。

また、共働き夫婦も多くなっていますので、母親が勤労収入を得ながら子育てをおこなうことになると、更に夫婦間の協力が欠かせないものとなります。

このような現代社会の状況において、夫婦間における子育ての歯車が上手くまわらなくなると、妻側にかかる負担が大きくなり過ぎてしまい、夫婦間のバランスがが崩れてしまうこともあります。

そして、この事態を改善しないで放置しておくと、いずれ夫婦間の溝が広がっていき、離婚に至ることも起こります。

小さな子のいる家庭は、常ににぎやかです。家族のライフサイクルの中では、一般に、大変幸せなステージにあると言えます。

でも、このような幸せにある時期であっても、子育てをしている母親にとっては、現実には、かなりの負荷がかかってしまっています。

子育てだけではなく、家事もしなければなりません。さらに、仕事を持っている母親もいます。肉体的だけではなく、精神的にも疲労が生じます。

このようなとき、夫婦の関係も、従来の2人だけのときのようにはいきません。夫婦間の精神的状態によっては、互いに摩擦が生じることにもなります。

子どもが家庭の中心になってくると、お互いが相手に望む状況が得られなくなることも少なくありません。いままで描いていた結婚という夢の世界と、現実の家庭とを、区別して認識しなくてはなりません。

現実が大変であるからといって、それが悪いことではありません。夫婦が協力していける限りにおいて、むしろ夫婦の結びつきが強くなることにもなります。

そして、そのような環境においては、自らの精神的な成長も図られていると言えます。

夫の方にも事情があります。子が誕生したからといって、仕事が楽になる訳はありません。むしろ、段々と責任ある仕事を職場等で任されるようになってきたりすることになります。

そして、夫自身としても、子の誕生によって、その成長に関わっていくこととなる責任感から、一層、仕事に熱心に取りくんでいくこともあります。

このような状況で、夫婦の相互理解、相互評価が上手くできていないと、夫婦関係が壊れていくことも、自然のことと言えるのです。

夫婦仲が良いと、家庭も安定します。

子は、常に家庭内にあり、その環境から大きな影響を受けることになります。そのため、家庭内の安定状態は、子にとっても良いことです。

一方で、夫婦仲が良くないと、子は敏感にその空気を感じ取ります。

子の成育上において、決して良い影響になりません。このことは、母親の体内にいるときから既にあり、母親の心理状態が、体内の子に影響すると言われています。

離婚後における面会交流の問題にもあるのですが、夫婦のケンカは（内容や程度にもよりますが）、子に対してストレスを与えることがあります。子としても、父母の仲が良いことを、心の中で本能的に望みます。

したがって、子育てのことで夫婦がケンカすることは、子にとってはつらいことになります。でも、現実には子育ての方針などは、夫婦それぞれの考えに違いがあることも当然ですから、すべて一致するものではありません。

そもそも、夫婦というのは、その育ってきた成育環境から何もかもが異なります。したがって、自分の受けた教育環境などを自分の子育てに適用しようとしたら、夫婦の間に一致することはあり得ない訳です。子育ての方針は、夫婦間での話し合いによって、決めていくほかありません。

気を付けなくてはならないのは、夫婦仲の良くないことを、子が自分の責任であると感じてしまうこともあることです。狭い家庭内であるため、家庭内の人間関係は当然のことのように、それぞれに影響するのです。

離婚になるとき、小さな子があると、だいたいのケースにおいて、母親が親権者となります。

そして、母親は、経済的自立について悩みます。離婚後に、働きながら子育てしていくことは、大変な覚悟が必要になります。

また、現実にも、離婚後のお母さんからの話しを聞きますと、心身共に強い疲労を受けているようです。

そこで、経済面からは、父親からの養育費が重要になります。この養育費の有無によって、離婚後の経済生活が、全く変わってきます。

ですが、現実的には、養育費の継続的な支払い状況は、全体として芳しい状況にありません。そのため、離婚後の経済状況に悲観して、離婚をためらわれる方も多くいらっしゃいます。

これは、夫婦の関係によっても違ってきます。たとえ、夫婦が離婚することになっても、子の養育費のことは、責任を持って考える父親もあります。一方で、養育費など、離婚後の子育てに関して何の話し合いもできずに、そのまま離婚してしまう夫婦もあります。

離婚後の母子の生活に対しては、一定の公的支援制度もありますが、それだけで生活が充足されるものではありません。

そのため、住居の問題、仕事、生活費の確保など、離婚に向けての課題を解決していくことが必要になります。一概に決定的な解決策があるわけではありませんので、離婚の前に、それぞれでもって調査し、しっかりと計画を立てることが大切です。